新しく理事会のメンバーになる皆様へ

長期修繕計画とは何?

 一般にマンションでは概ね10年~15年毎に共用部分の大規模な修繕工事が必要です。この修繕工事には、戸当たりでおよそ80万円~100万円程度の費用がかかるとされています。
 長期修繕計画とは、このように多額の費用がかかる、マンションの共用部分の計画修繕工事を実施するために、向う25年~30年間を見通して、いつどの部分を修繕するのか、そのためにはどのぐらいの費用がかかるのか、そしてその費用を区分所有者がどのように負担しあうのか、また、必要に応じて建物、設備の性能向上を図る改修工事を予め計画するものです。
 そのためには、次の①~③を目的とした長期修繕計画を作成し、これに基づいて修繕積立金の額を設定することです。
 ・将来見込まれる修繕工事、改修工事の内容、及びその時期、概算の費用などを明確にする。
 ・計画修繕工事実施のために積み立てる修繕積立金の額の根拠を明確にする。
 ・修繕工事及び改修工事に関する長期計画について、あらかじめ所有者で合意しておくことで、計画修繕工事の円滑な実施を図る。また業務委託している管理会社の提案をうのみにせず、自主的に判断し、また必要に応じ外部専門家の意見を求めるなどを行い、合意をしておくことで、計画修繕工事の円滑化を図り実施することが、資産価値の維持に重大な要素となります。
 *添付資料(マンション長期修繕計画資料)を参照してください。

 

修繕積立金とは何?

 計画修繕工事を実施する際に必要となる多額の費用を確保するために所有者が毎月積み立てるものが修繕積立金です。
 修繕積立金は、長期修繕計画に基づき、修繕工事が必要な時に、必要な工事費が確保できるように、毎月の積立金額を設定することが大切です。
 修繕積立金と管理費は性格が異なります。修繕積立金は前述したように使用する目的が決まっている貯蓄で、管理費は家庭における生活費のようなもので、日常的な支出に消えていくお金といえます。

 

計画修繕工事とは何?

 マンションでは個人で所有する「専有部分」と、管理組合で所有する「共用部分」から構成されています。分譲マンションの場合、専有部分以外は共用部分です。個人の住まいである専有部分へいくには、一般的に玄関→ホール→E・V→開放廊下→専有部分へと辿り着きます。このように共用部分があって、初めて住宅として機能します。(設備関係も同様です。)
 これら建物を構成している部位・部材も、人の体と同じように時の経過とともにあちらこちらに“劣化”呼ばれる傷みが生じてきます。これらの劣化の状況に応じて、長期修繕計画に基づく計画的に行う修繕工事(計画修繕)が必要です。

 

大規模修繕工事とは何?

 長期修繕計画に基づいて計画的に実施する修繕工事及び改修工事で、建物の全体または複数の部位について行う大規模な計画修繕工事を「大規模修繕工事」(国土交通省:「長期修繕計画ガイドライン」)と定義しています。例えばマン ションの外壁に仮設足場を架けて実施する、屋根防水、外壁補修、外壁塗装、鉄部塗装等を同時に施工する工事です。この工事費用は、修繕積立金から充当されます。
 この大規模修繕工事は、前述したとおり10年~15年ごとに実施され、マンションの寿命を60年と考えると4回実施されることになります。
 また、計画修繕工事の中でも多大な工事費が発生する工事でどこのマンションでも資金面では苦慮が絶えません。特にお住いの皆さま方は、日常生活の場が工事現場となるために負担がかかります。

 

マンションの建替えとは何?

 マンションがかなり古くなってくると、計画修繕の修繕・改良では最新のマンションの性能に追いつけないことがあります。例えば、次のような場合です。
 ・安全性について  耐震性の基準が現在の基準を満たしていない、建物を構成している部材に著しい劣化がみられる、・・・・等。
 ・居住性について  断熱性能が劣る、エレベーターがない、廊下の幅が狭い、設備が使いにくい・・・等。
 ・専有部分の居住性について  天井高さが低い、住戸が狭い、遮音性が悪い、バリアフリー対応になっていない・・・等

 このような問題が、お住いの皆さまから理事会、管理組合へ寄せられた時に「建替え」の検討が必要になってきます。ここで重要なことは建替えありきではなく「修繕か改修か」を検討することです。組合内に専門委員会を設置し、第三者の専門家を交えて、勉強会を開催したり、建替え事例を研究したりしてお住いの皆さまの合意形成が得られるように時間をかけて検討することです。この時に、建て替えか修繕かの判断をする指針に「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」に則って判定することが重要です。

 建替えか修繕かの判定結果が建て替えと判定された場合、建替えの手法については下記の方法があります。

 

手  法

 1 区分所有者全員の合意による建替え
 2 区分所有法の建替え(A):マンション建替え円滑化法による建替え 区分所有法の建替え(B):マンション建替え円滑化法によらない建替え
 3 敷地売却制度

 

敷地売却制度とは

 上記1~2の手法とは違い、耐震性が不足していることについて国の認定を受けたマンションにお住いの皆さまは、区分所有関係を解消し敷地を売却できるというものです。その後、マンションが建設されたら購入して住むことも可能です。

 どの手法にもメリット・デメリットがあり、区分所有者だけで判断するには大変危険です。その道の専門家にぜひ一度相談することが必要と思われます。

 今回は新しく理事会のメンバーになられた方を対象に、①長期修繕計画とは何、②修繕積立金とは何に、③計画修繕工事とは何、④大規模修繕工事とは何、建て替えとは何、を簡単に説明しました。マンションのライフサイクルも人のライフサイクルも事後保全という考え方よりも予防保全という考え方が大切です。

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